肩の痛みの原因
上着を着ようとして肩を挙げると痛い。
女性なら下着を背中で付けるのが出来ない。
ボール投げの動きが出来ない。
ゴルフで思い切り捻れない。
肩の痛みは多くの方に様々な形であらわれます。
特に40代を過ぎるくらいから、その数は一気に増えてきます。
「年のせいかな・・・」
「みんなも痛いって言ってるし・・・」
「どこかに通う必要はないかな~」
このように思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
先に結論からお伝えすると
「肩の痛みは絶対に我慢せずに、すぐ整形外科や接骨院で診てもらった方が良い」
という事。
「ほっといて治った話を聞いた事がある。」
確かに幸運にも自然治癒する方もいます。
が、それ以上に悪化させてから受診する人の方が多くいます。
そもそも肩の痛みは何故起きるのでしょうか?
思い切りボールを投げた時に捻ったり、物を持ち上げようとして力んだ際に痛めるケースもありますが、多くの肩痛は原因らしい原因が思いつかないものです。
肩の痛みは
日頃から肩の使い方の悪さが積もり重なって発生します。
ここでいう「使い方の悪さ」とは
・いつも同じ作業ばかりする
・無意識に肩に力が入ってしまう
・バンザイをすることがほとんどない
・猫背になっている
などです。
人間の肩は真っすぐな姿勢を普段から取って、肩回しやバンザイをこまめにしていれば痛めることはほとんどありません。
それが出来ず、悪い使い方を続けると少しずつ肩にはダメージが溜まってきます。
ダメージはいずれ炎症を引き起こし、痛みとして自覚されます。
そう、肩の痛みは「炎症」によるものが大半です。
筋肉や靭帯、関節包、滑液包という組織のいずれか、または複数に炎症が起きると痛みが発生します。
肩の痛みを説明するためには、どうしても解剖の知識が必要になります。
基礎的な部分だけを抜粋してお伝えします。
肩の基礎解剖学
基礎的な解剖として・・・
肩関節とは肩甲骨と上腕骨の二者によって構成されます。
上腕骨は関節部分がボールのような形をしています。
これによって肩は様々な方向へ広い可動域を確保する事ができます。
しかし、自由自在に動くという事は逆にそれだけ脱臼もしやすいという事。
実際、全身の脱臼の中でも肩関節脱臼は断トツに多いです。
脱臼をしないために、また広い可動域で動かしても痛めないように身体は防御装置をいくつも作っています。
それらが
①関節包
②インナーマッスル
③滑液包
というものです。
※厳密に言えばまだまだ組織がありますが割愛しています。
まず①の関節包とは
上の図のように上腕骨と肩甲骨をすっぽり覆う袋の事です。
袋の中は関節液で満たされていて、動きを良くするオイル代わりになっています。
車でいうところのドライブシャフトブーツみたいなものです。
②のインナーマッスルは言葉として聞いた事がある方も多いのではないでしょうか?
言葉の通り、肩の筋肉でも特に深部にあるものを指します。
①の関節包の上層についており、筋肉の力で両者の骨がズレないように引き付けてくれています。
③の滑液包は上図の青く示された部分にあります。
②のインナーマッスルの上に存在し、肩を動かした際に骨同士や筋肉同士がぶつからない様にするための緩衝材の役割を果たしています。
①②③これらの組織のおかげで、人間は自由に動かせて痛めない肩を獲得できています。
では、組織が上手く機能しなくなったら?炎症を起こしたら?
もちろん痛みが発生します。
五十肩は一番有名な肩の症状名です。
そちらを解説します。
五十肩とは?
五十肩は正式な医学用語ではありません。
もちろん四十肩も。
「肩関節周囲炎」
が正しい名称になります。
先ほど紹介した組織で言うと
①関節包
③滑液包
に炎症が起きている状態を指します。
ちなみに
②インナーマッスル
が傷ついている場合は
「腱板損傷」
という傷病名になります。
インナーマッスルが腱板とも呼ばれるためです。
これは五十肩とは別の傷病とされています。
まとめると
五十肩=滑液包or関節包の炎症
五十肩≠インナーマッスルの損傷
と区別されます。
しかし、実際の現場ではここまで厳密に分類されていないケースも多々あります。
インナーマッスルが明らかに傷ついているの、または上腕二頭筋に炎症が起きているのに「肩関節周囲炎」の診断を病院で受けている、という事です。
整形外科で主流となっているレントゲン検査だけでは、ほとんどが骨のダメージしか分からないという事が原因かと思われます。
レントゲン検査で「骨には異常がない」。
それ以上は分からない。
→「肩関節周囲炎」の診断となる。
以前、整形外科の医師からも
『肩関節周囲炎という傷病名はとても都合が良い。』
という話をお聞きしました。
レントゲンでも分からないなら、どんな検査をすれば分かるのでしょうか?
それはMRIと、当院でも行っているエコー検査です。
特にエコーは肩を実際に動かしながら、組織を確認することが出来るため本当に有用な検査です。
このように五十肩と言われている場合でも鑑別すると様々な種類があります。
さらに種類を挙げていくと
①肩関節周囲炎
②腱板損傷
③上腕二頭筋長頭腱炎
④石灰沈着
⑤腋窩神経痛
⑥胸郭出口症候群
⑦インピンジメント症候群
・・・など
それぞれに対して行うリハビリは違ってきます。
そのために、初診ではしっかりとした鑑別が必要になります。
次回は具体的な治療法についてお伝えします。
きしざわ接骨院
院長 岸澤